2006年5月27日 (土)

『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂 幸太郎

陽気なギャングの日常と襲撃陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂 幸太郎

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人間嘘発見器・成瀬、演説の達人・響野、天才スリ・久遠、正確無比な体内時計の持ち主・雪子。史上最強の天才強盗4人組が巻き込まれたバラバラな事件。しかし…。「陽気なギャングが地球を回す」に続く第2弾(「MARC」データベースより)。

最近の伊坂さんはおっかないところもあるので、「終末のフール」は手が出せずにいた(だって舞台設定がすでにおっかない…)。これはすんなり。ノベルズサイズがぴったりのシリーズにしてくれて嬉しい。章ごとの冒頭につく言葉の解説や、表紙も楽しいし。フランスパン喰って牛乳牛飲してるよ!
一章目と二章目からの趣ががらりとかわるのは、後書きに解説してある通り(そして後書きにあるように、前作のかなり重要なネタばれがあっさり書かれているので順番は守らないと危険)。その一章目は四人組以外の視点で語られていて、これがけっこう楽しい。成瀬(どんな公務員か)、雪子(アルバイトに何をやっているか)がからむ話が好きだなあ。ちらばったエピソードが鮮やかに集束していくあたりはいつもの伊坂作品。他愛のない会話に含まれていたことが当たり前のように重要な鍵になっていくのは、本当に感心する。逆に言えば、韜晦させるのが如何にうまいかということだろうけど。
自分にとってはお楽しみ本なので、このぐらいの雰囲気でまた続きを出してくれればと思う。今回あまり出番のなかった祥子、慎一、タダシくんあたりの様子をみたい。
映画はどうしようか…、くどくない作りだといいんだけど…。

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*second message*さんにTBさせていただきます。雪子についても言及されてます。

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2006年4月25日 (火)

『夜市』恒川 光太郎

夜市夜市
恒川 光太郎

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大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。(〜以下略、Amazon紹介より)

日本ホラー小説 大賞受賞作。まず出だしが素敵なのでこの時点で作者の術中に嵌ったようなものである。夜市の開催を伝えるのが学校蝙蝠なんて言われてしまったら…、もう大期待。邦画ホラーの常套手段である脅かしはなくて、目に映る情景(=映らないはずのものでもある)を淡々と描写、後半に繋がる伏線を丁寧に仕掛けてゆく。とてもよくできたパズルで、大賞の選考委員たちはべた褒め。あんまりぴったりはまるので、自分的には逆に想像の余地がなくて受け容れるだけ(若干平坦な印象)になってしまったのだけど…。
「夜市」だけでなく、併録「風の古道」も素敵な作品。非道な人間が登場し、むごい状況を描きつつも汚らしくならない。ぬれ落ち葉が降り積もった山道を歩くような、闇と風と湿度を間近に感じる文章。友人とのエピソードがもの凄く効いていて、結構な結末なのに、読後感が悪くない。
二作ともかなり出来上がった作品で、作者の方向性がくっきり見えた気もするのだけれど、今後どのように裏切ってくれるのかが楽しみでもある。

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2006年4月16日 (日)

『古道具 中野商店』川上 弘美

古道具 中野商店古道具 中野商店
川上 弘美

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『古道具』『骨董』と出てくるとつい品物たちにまつわるお話に期待してしまうのだけど、そういう本ではナイ。曇りと小雨の続くお天気のようなあいまいな空気感でじんわりと進んでゆく。主となるのは現実味の薄い「若者二人の恋愛」「さえない店主と愛人関係」と、あり得るかもしれないけれど「店主の姉と愛人」。とにかく三つともぜったいにしたくない恋愛の形であった。空虚な恋愛に対して、作者の川上さんは男女のからだの交わりについてかなり固執しているようで、行為についての考え方や経験、シチュエーションなどが列挙されていて、モロな描写よりある意味キツイ(他人のセックス観なんて、酒の席でも聞きたいもんじゃないよな〜)。読みやすさのわりに、後味に妙な空しさ重たさが。
で、ネットで探してみると、そんな感想を持った人はあんまりないらしい。ふんわりゆったり淡々とした幸福感…あたりがキーワードのようである。実は「センセイの鞄」を読んだ時にもこの本と同じような感想を持ったのだけど、うがちすぎなんだろうか、自分?

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2006年3月29日 (水)

『雨柳堂夢咄 其ノ十一』波津 彬子

雨柳堂夢咄 其ノ十一雨柳堂夢咄 其ノ十一
波津 彬子

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まだまだ落ち着きませんが、引っ越して良かったことがひとつ。駅前の本屋さんが、24時までやっているんですねー。ある意味気をつけないとヤバーいのですが。

とはいえ、そのお店で初めて購入したのはマンガでした。二年ぶりの新刊だそうで。波津さんの作品は姉の影響で読み始めて長いのですが、女性の顔のエラの張りがなくなり、ついにこの新刊に出てくる動物(半動物?)は可愛らしさいっぱいになりました(ともするとリアルで恐ろしい猫、狸たちだったので…、でも狐は可愛かったか)。

425317471X四季つづり
花郁 悠紀子
秋田書店 1999-10

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夭逝した漫画家、花郁 悠紀子さんは波津さんのお姉さんです。実は絵がそっくり(骨格のあるなしの差はあれど)。波津さんはお姉さんのことに触れる際は本名の「開発」さんに戻られることが多いようです。仲良く「花郁」さんと「波津」さんで名字をわけているのが素敵。花郁さんのすみずみまで神経の行き届いた作品は、今も古びません。

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2006年3月 1日 (水)

『沼地のある森を抜けて』梨木 香歩

沼地のある森を抜けて沼地のある森を抜けて
梨木 香歩

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始まりは「ぬか床」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を伝える書下ろし長篇。<Amazon紹介より>
というか、初めの一章を読んでこちらが呻いてしまった。「うまいなあ…」。どろどろした状態、状況を綴っても涼やかな文章。日常の中にぽんと非日常を放り込んで、過去の謎やわだかまりを溶いてゆく。見事に完結しているので、むしろその後の章の構成が受けいれにくかった。「性」や「性差」を排する、あるいは越えることを語るのは難しい。鼻につかないギリギリなところ。にしても、自分の「種としての性」について本能以外を持たない人には何が論点なのか意味不明なのではないかと。

梨木さんが帯の推薦文を書いている本。

私の部屋のポプリ私の部屋のポプリ
熊井 明子

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30年ぶりの復刻だそうで。一世を風靡したんだよなあ、ポプリって。
小学生の頃手に取って、高尚すぎてさっぱりわからなかった覚えが(笑)もいっかい読んでみるか?しかし旦那さまはすっかり映画監督(熊井啓氏)として大成されましたねえ。まだ助監督の頃に大暴れしていた様子が印象深い(この本だっけ?)。

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自分がこの本を図書館から借り出した頃に読後感想をアップされていた、Diary of 食・飲・読・旅・潜・泊さんにTBします。

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2006年2月18日 (土)

『黄昏の百合の骨』恩田 陸

黄昏の百合の骨黄昏の百合の骨
恩田 陸

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「麦の海に沈む果実」続編。
遺言により、留学先のイギリスから戻り、亡くなった祖母の洋館へ〜人々に「魔女の館」と噂される〜やってきた水野理瀬。年上の従姉妹二人との生活が始まり、事後処理のために従兄弟の二人、稔と亘もそこへ訪れる。

恩田さんて、タイトルつけるのうまいなあ…。
しかしながら前作に比べ、たいそう緊張感に欠けていた。理瀬はその魅力やキレが描き込まれていないため、むしろのんびり屋さんになってる?自分から去ってしまった子供時代に哀切を感じているかと思えば、女の武器を出し惜しみしなかったり(このくだりはかなり陳腐で笑ってしまう)。その落差がただの行き当たりばったりに見えるので…。
理瀬、そんなことじゃ「敵」には勝てんぞ。
このシリーズは、まだ材料を並べて調理し始めたところのようである。

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2006年2月11日 (土)

『博士の愛した数式』小川 洋子

博士の愛した数式博士の愛した数式
小川 洋子

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「私」とその息子と、そして博士。
三人に用意された時間は、さらさらと砂時計のように流れてゆく。
そのこぼれきった砂が形作ったのは、博士のための美しい世界。
かたくなな義姉は過去に伝えられた想いとそこで止まった時間だけを支えに、三人の世界には立ち入ろうとはしない。ただその美しさを眺めることのみを受け容れる。

三人にとっての世界は、まったくメルヘンかファンタジーかというようなものだ。
重要なのは、いち早く世界を信じて守ろうとするのが子供であること。彼の考えは彼自身を裏切らずまっとうされ、終盤では更に美しい世界に厚みを加えている。そして江夏!彼が登場することで、あやうい世界は現実から逸脱せずに持ちこたる。文章は数式とともに美しく並べられ、遅滞なく美しい世界をみせてくれた。

以前、小川さんの作品はエグすぎて(悪い意味でなく…、うまさゆえ)挫折したことがあって、このくらいの味つけが自分にはちょうどいい感じ。「本屋大賞」「記憶障害」「映画化」となんだか俗っぽく感じるけれど、それで忌避してしまうのはもったいない作品。
文庫の解説は数学者の藤原正彦氏で、ずいぶんと嬉しそうに書いてらしているのが失礼ながら微笑ましい。

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス
藤原 正彦

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おそろしく数学は苦手なので、過去にこの本を手に取っていたこと自体が奇跡。
「数学も(世の中の為には)重要らしい」とかなんとか思ったような。でもやっぱり学者さんてたいへん。

ところで、若者が年長者を野球場に連れてゆく構図って、人を惹きつける何かがあるのかしらん。

フィールド・オブ・ドリームスフィールド・オブ・ドリームス
ケビン・コスナー フィル・アルデン・ロビンソン エイミー・マディガン

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有名すぎる作品。年長者は作家(原作ではサリンジャー)。
原作も読んだけど、映画の脚色が素晴らしい。

小説家を見つけたら小説家を見つけたら
ショーン・コネリー ガス・ヴァン・サント ロブ・ブラウン

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こちらも年長者は伝説的作家。主に絡んでくるのはバスケだけど。
映画の字幕は「?」なことが多く、読んでみたノベライズがわりと良かった。

というわけでこの構図、自分にとっては三作目の当たりだった。

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2006年2月 4日 (土)

畠中恵さんのインタビュー

エキサイトブックスに。
んー、購入には至ってないのですが。
この方の現代物は未読です。

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2006年1月27日 (金)

『女二十九歳、とつぜん骨董にハマる』高橋 文子

女二十九歳、とつぜん骨董にハマる女二十九歳、とつぜん骨董にハマる
高橋 文子

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早起きが苦手にもかかわらず、市があると思えば朝4時起きも平気。今日は川越、明日は高幡不動。すてきな古伊万里が私を呼んでいる—。近所の陶芸倶楽部に通いはじめた女性が、骨董集めにも開眼。お金も知識もないが、お気に入りの皿や鉢を追い求めて、毎週のように各地を駆けめぐる。見ても使っても楽しい器の味わい深さや、愉快な出来事、人々との出会いなど、「骨董のある生活」の楽しさがたっぷりと詰まった爽快エッセイ(Amazon紹介より)

作者の高橋文子さんは、古伊万里好き。ひたすら好きなものを買い集め、普段使いをする様が語られてゆく。本のなかほどにコレクションの一部写真が載せられていて、どれも親しみやすく愛嬌のある品。けっこう無理無理な(値切って!ローンで!通りすがりの人に頼み込んで!)人だなあと思うけれど、桁違いの世界ではないようなのでだいじょうぶなんだろう。
今は骨董熱というか古伊万里熱は冷めて、他のものに夢中のようだ。まあ本の中身にも深みや厚味はないので、そんなものかな(収穫した品々と自分の突飛な行動の自慢がほとんどだし。逆に言えば、それで本として成立しているという…)。いかにも女性的な夢中っぷりが楽しそうではある。身近な人だとしたら、困ったちゃんだけど(笑)

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2005年12月31日 (土)

『エンド・ゲーム』恩田 陸

4087747913エンド・ゲーム
恩田 陸
集英社 2005-12

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2005年の締めはこの本、営野物語三作目。
まっとうに、「オセロ・ゲーム」の瑛子と時子の続きの話で嬉しい。
おお、そう来たか!
瑛子と時子が夫、あるいはお父さんを待ち続けた年月に比べれば短いけれど、けっこう何年も騙されてたんだなあ。
新たに「包む」「洗濯屋」の言葉が。わくわくする。

「オセロ・ゲーム」からの伏線はともかく、「エンド・ゲーム」内での伏線はいささか未消化だし、終盤は文章自体が駆け足で散漫というか甘いような気もするけれど、『光の帝国』のあとがきでの約束が果たされたことに感謝!そんな気持ちになってしまう設定なんだから仕方ないよなあ。
まだ残っている約束を待ちつつ、また来年!

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